『古今集遠鏡』文化十三年子極月版 本居宣長著 寛政5年(1793)頃成立。同9年刊行。
文化十三年子極月
京都書林 風月 庄左衛門
大坂書林 敦賀屋 久兵衛
江戸書林 前川 六左衛門
尾張書店 永楽屋 東四郎 印
『古今集遠鏡』巻六 0最後のページに記されている。
文化十三年子極月=1816年12月
家族の書棚で見つけた本居宣長の『玉あられ』をざっくりと読み、面白かったため、『古今集遠鏡』六冊を購入した。
和歌の中でもなぜか知らん『古今和歌集』の好きな私は、これまでにも本居宣長記念館に行き、博物館などでも本居宣長に触れる機会があったのはありがたい。
読書の秋。
以前に読んだ東洋文庫の『古今集遠鏡 上』も購入したことだし、マイペースで楽しんで遊ぼうと思う。
以前に訪れたことのある本居宣長記念館の公式HPでは、『古今集遠鏡』は次のように説明されている。
『古今集遠鏡』(コキンシュウ・トオカガミ)
6冊。寛政5年(1793)頃成立。同9年刊行。
「遠鏡」とは望遠鏡のこと。
実はこの前年、和泉国貝塚の岩橋善兵衛が、国産天体望遠鏡第1号を制作して、5年には京都で天体観測会が開かれている。
岩橋の望遠鏡は、八稜筒で直径が24センチから27センチ。
長さがその十倍と言う大きなもので、「阿蘭陀わたりの望遠鏡よりもよくみゆ。余が家にも所持す」と橘南谿(1753~1805・久居の儒医)は『西遊記』の中で記している。ちなみに天体観測会を主催したのも橘南谿である。
「遠鏡」という書名がブームに乗ったものとは言えないまでも、このような時代風潮の中にあったことは見逃してはならない。
さて本書は、『古今和歌集』の全歌(真名序、長歌は除く)に、今の世の俗語(サトビゴト)、つまり口語訳、また補足的な注釈を添えた本。横井千秋の序文に「この遠鏡は、おのれはやくよりこひ聞えしまゝに、師のものしてあたへたまへるなり」とあるように。千秋のもとめで執筆した。訳は、てにをはに注意し、また言葉を補う場合はその箇所を明示し、厳密な逐語訳となっていて、一見、初学者向きの入門書ではあるが、高い水準を保っている。 『古今集』は宣長にとって最も尊重する、また愛好した歌集であった。
「古今集は、世もあがり、撰びも殊に精しければいといとめでたくして、わろき歌はすくなし」(『うひ山ふみ』)。
新年の読書始めも同集序を選んでいる。講釈も『源氏物語』や『万葉集』と並んでその中軸となるもので、生涯に4度も行っている。一つの本の回数としては最高である。
(本居宣長記念館の公式HP http://www.norinagakinenkan.com/index.html)