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Channel: 乱鳥の書きなぐり
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映画『悪魔』 原作:谷崎潤一郎 監督:藤井道人 脚本:山口健人 4,3★  2018年 吉村界人 大野いと 前田公輝 遠藤新菜 山下容莉枝

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   映画『悪魔』 原作:谷崎潤一郎 監督:藤井道人 脚本:山口健人 4,4★  2018年 吉村界人 大野いと 前田公輝 遠藤新菜 山下容莉枝



  映画『神と人との間』
  映画『芙美子の足』 

 上を見たので、文豪・谷崎潤一郎の短編を3人の映画監督が現代劇として映像化するシリーズ「谷崎潤一郎原案 TANIZAKI TRIBUTE」の1作。大正元年に発表された谷崎の同名小説を「光と血」「オー!ファーザー」の藤井道人監督が映画化。吉村界人、大野いと、前田公輝という注目の若手キャストが共演する。大学入学のために上京した佐伯の下宿先となる林邸は閑静な住宅街に居を構え、大家の千枝、千枝の娘・照子、林家の親戚にあたる鈴木が住んでいた。佐伯はアルコールにおぼれ、大学にもなじめず、幻覚に苦しむ日々を送っていた。高校生ながら不思議な色気と魅力を持つ照子は頻繁に佐伯の部屋を訪れ、佐伯の心を惑わせた。照子を偏愛する鈴木は、佐伯に照子に近づかないよう警告するが、佐伯は鈴木の言葉に反発する。

 上のあらすじの説明が曲者である。


     高校生ながら不思議な色気と魅力を持つ照子は頻繁に佐伯の部屋を訪れ、佐伯の心を惑わせた。照子を偏愛する鈴木は、佐伯に照子に近づかないよう警告するが、佐伯は鈴木の言葉に反発する。

     そしてネタバレするならば、最後は、鈴木が佐々木を刺し殺した…みたいな^^

 


            よくみtれば、鈴木が佐伯の喉を掻っ切ったはずのナイフ
            佐伯の右手には、そのナイフが光る。    ←(ここ、ポイント)




 バスに乗った、強迫観念に囚われた佐伯の場面から始まるこの映画。この強迫観念は最後までおをひくことになる。


 佐伯は親にも見放され、度々金縛りにあい悪夢を見て鼻血を出した後は、夢が現実になるという錯覚に陥る。

 幻覚が見え、生きたエビが這いずりのたうち回り、鈴木が悪夢と化して渦巻く。

 これぞ、今現在で云う所の「統合失調症」、私の大学時代で云うならば、「分裂症(現在使ってよくない言葉であるならば、お許しください)」症状を思い浮かべ、カフカを思い出す。

 それを匂わすかのように絵にの小刻みな動きを多用し、高校生の女を原因の根源と考えるが、それを他意に考えたい願望が「鈴木」と云う男の存在を心の中で描き出す。


 なぜそう感じるか。

 入学した大学生活で知り合った同級の女子の言葉である。

「ある日急に一日だけ元気になった弟は次の日に自殺した、心理学を学べば、弟の気持ちがわかるかと思ったが、わからなかった、(要約)」
と悲しそうに話す彼女は、自殺した弟と佐伯の姿を重ね合わせていた。


 私は大学生の頃に専攻外であるにもかかわらず心理学にハマったことがあったことはこのブログでも何度か書いたことがある。

 みすず書房の『ある分裂少女の手記』はまさに私の考えるカフカの世界を美しい世界との逆に記されたものであったが、今回見た映画『悪魔』はその書物を色鮮やかに思い起こさせた。

 そい云う意味且つ佐伯役の吉村界人さんの迫真の演技に拍手しつつ、4,4★と云う点数をつけさせていただいた。


 この映画は、深読みを張り巡らせていくとかなり面白いです。こういった映画も私は好きです。




 映画を見終えた後に天井をみ自分の血管を凝視したが、天井はいつものように板張り、あるいは壁紙張りで何の変化もないし、虫もはいずり回ってない。(笑)

 自分の皮下や血管を見つめて見たものの、やはりいつもの私も可愛いお肌であった。(あったりまえか!  笑)

 せっかくこのような面白いテーマの映画を見たのに、見終えた後はいつも通りに健全すぎる私の面白みのなさに多少いや気を感じたかもしれないし、健全で良かったと安堵した事実もぬぐいきれない。


 この映画も感想を見ていると、評価が低いものが多い。

 残念である。



 鈴木という人物の三角関係、鈴木の狂気、鈴木の変質を歌った感想が多いが、実はそれは全て佐伯自身が作り上げた人物、いわば妄想であり、大学の心理学講座で教授が交互されていた内容の一部
「自殺を正当化(??)し云々   (要約)」
に通じる。

 佐伯の妄想や願望はかなり広範囲にわたっているので、どれが現実でどれが幻想かといったことを分析するのは難しいし、また、この映画では現実と幻想に二分化するといった作業はナンセンスであると付け加えておきたい。



 映画『神と人との間』 『富美子の足』 『悪魔』それぞれの面白い作品を楽しませていただいた。

 充実の時間を送れたことに感謝している。
 

 

 今回も簡単な記録のみにて、失礼申し上げます。






 映画『悪魔』

 文豪・谷崎潤一郎の短編を3人の映画監督が現代劇として映像化するシリーズ「谷崎潤一郎原案 TANIZAKI TRIBUTE」の1作。大正元年に発表された谷崎の同名小説を「光と血」「オー!ファーザー」の藤井道人監督が映画化。吉村界人、大野いと、前田公輝という注目の若手キャストが共演する。大学入学のために上京した佐伯の下宿先となる林邸は閑静な住宅街に居を構え、大家の千枝、千枝の娘・照子、林家の親戚にあたる鈴木が住んでいた。佐伯はアルコールにおぼれ、大学にもなじめず、幻覚に苦しむ日々を送っていた。高校生ながら不思議な色気と魅力を持つ照子は頻繁に佐伯の部屋を訪れ、佐伯の心を惑わせた。照子を偏愛する鈴木は、佐伯に照子に近づかないよう警告するが、佐伯は鈴木の言葉に反発する。

2018年製作/83分/日本
配給:TBSサービス




監督:藤井道人 

脚本:山口健人 

吉村界人 大野いと 前田公輝 遠藤新菜 山下容莉枝

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