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『海の見える杜 舞の本を読む  微笑が愛した舞の世界の物語』石川透 星瑞穂編 (三十四話掲載)  舞の本「冨樫」を能楽、歌舞伎と比較しながら記録。

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   『海の見える杜 舞の本を読む  微笑が愛した舞の世界の物語』石川透 星瑞穂編 (三十四話掲載)  舞の本「冨樫」を能楽、歌舞伎と比較しながら記録。



 石川透 星瑞穂編
 三弥井書店発行  1冊2800円+税
 252ページ

     

 
『海の見える杜 舞の本を読む  微笑が愛した舞の世界の物語』を読む。

 本書は舞の本に出てくる多くの演目を『奈良絵本』の絵図を交えながら、わかりやすく解説。

 元の文字も一ページづつではあるが載せられているので、味わい深く読むことができる。

 ページ数は252だが、人るの話を何度となく読み、また歌舞伎や能額などを思い浮かべながら読み進むとと、かなりの時間がかかった。

 次回は岩波の新古典文学大系で楽しみたい。


『海の見える杜 舞の本を読む  微笑が愛した舞の世界の物語』では、三十六話が載せられている。

「入鹿」に始まり「新曲」で終わる『舞の本を読む』は「信田」や「敦盛」、或いは「硫黄が島」と言った瞬間の話や蘇我五郎十郎関係の話、義経弁慶静御前の話などが筋道を追って載せられており、それらの歌舞伎役者の声色を載せてよみすすめると至福のひと時が味わえる。


 幸若舞は以前にユーユーブで拝見させていただいたが、リズムや合いの手が興味深い。

 元々幸若舞はめでたい芸能であったらしく、華やかでリズ未活な調べである。


 本書には上にも書いたが三十六話が載せられている。

 全てが興味深い話であったが、その中でも能楽「安宅」、歌舞伎「勧進帳」の部分に絞って取り上げようと思う。

 なお、舞の本では能楽「安宅」、歌舞伎「勧進帳」の場面は、舞の本(幸若舞)「冨樫」と名付けられている。


 ところで海の見える杜戊戌間では次の展覧会が開催されていたらしい。あいにく終わったところであったのが残念でならない。

      春期特別展 幸若舞曲と絵画—武将が愛した英雄たち
      広島県廿日市市大野亀ヶ岡10701

      開催期間:2019年3月2日(土)〜2019年5月12日(日)



 「冨樫」

 
 義経一行は山伏の姿に変装すると、奥州を目指して北陸道を下って行った。
 加賀安宅の松の下で子供達に平泉の道順を尋ね、弁慶は子供達に奥義を配る。

 
 奥義をもたい喜んだ子供達は、義経一行に、冨樫城が山伏禁制の難所であることを得意になって教える。

 弁慶は一行と離れ単独で冨樫城を目指す。
 弁慶が冨樫城に入しろすると、冨樫介と家臣の若侍たちは色めき立つ。(ここでが絵図は省略)

 ここまでの話は能楽「安宅」、歌舞伎「勧進帳」には無い。舞の本に対して、興味深く感じた。

 
 弁慶は冨樫介に自分の人相学を突きつけられる。
 勧進帳を読み上げた弁慶。
 この場面などは能楽「安宅」、歌舞伎「勧進帳」の醍醐味と言って良いであろう場である。

 
 勧進帳を読み上げた弁慶の拡大。
 能楽「安宅」、歌舞伎「勧進帳」の衣装や頭(頭の傘と髪の違い)は大変違うのも面白い。

 しかし弁慶の読み上げが終わる、冨樫の接待の場になると、弁慶は座に座る。
 姿を前から見れば、頭の傘を外した弁慶は衣装の色こそ違うが、能楽や歌舞伎で馴染みの弁慶である。(ここでが絵図は省略)

 奈良絵本で描かれる弁慶や、舞の本での筋書きは能楽や歌舞伎とは少しづつ違いがあり、面白いと感じた。

 舞の本全体が、あれこれと歌舞伎などとは異なりを見せ、幸若舞も興味深い、日本の伝統芸能の一つとして残していただきたいと痛感した。



 舞の本とは
 幸若舞(こうわかまい)の詞章を記した本。今日、五十数番の曲を伝え、平家物語・義経記・曽我物語などと同素材のものが多い。古浄瑠璃に大きな影響を与えた。

   『説経節』「信徳丸」東洋文庫(『弱法師』『摂州合邦辻』『文楽瑠璃集 』の「摂州合邦辻」比較)
   『説経節』から 「付 信太妻」 東洋文庫 平凡社
   『古浄瑠璃 説経集』から「さんせう太夫」 岩波 新版古典大系
   『さんせう太夫考』から「説経序説」「さんせう太夫の構造」岩崎武夫著 平凡社選書
    東洋文庫『説経節』から「山椒太夫」「注」「解説:山椒太夫」昭和44年3月
   『説経節』厨子王丸& 『幸若舞』信太(平将門孫)& 『説経節』小栗判官 = 重瞳、双瞳
   『小栗判官』
   『中世の貧民―説経師と廻国芸人 』塩見鮮一郎著 説経節の名作『小栗判官』を題材に、貴族や高僧、武士ではなく、庶民の目から見た貧困、病、宗教、道行きを描く。
   『説経節』(東洋文庫)より「山椒大夫」(天下一説経与七郎)、『古浄瑠璃 説教集』(新日本古典文学大系)より「さんせう大夫」(天下一説経与七郎正本 「さんせう大夫物語」で補う)
   『説経節』(東洋文庫)より「付 信太妻」 樟の葉と恋に陥った安倍保名の本名は、安倍権太左衛門保名。子は、安倍晴明。
   『『海の見える杜 舞の本を読む  微笑が愛した舞の世界の物語』石川透 星瑞穂編 (三十四話掲載)  舞の本「冨樫」を能楽、歌舞伎と比較しながら記録。


 
 久保田毅様
 平成28年1月20日、大江八幡宮に奉納された幸若舞です。
 源義経が安宅の関で富樫に取り調べられる場面です。

 
 久保田毅様
 建久4年(1193年)、源頼朝は、富士の裾野で盛大な巻狩を開催した。巻狩には工藤祐経も参加していた。最後の夜の5月28日、曾我兄弟は祐経の寝所に押し入った。

 
 Hidekawa0627様
 幸若舞(こうわかまい)は、室町時代に流行した語りを伴う曲舞の一種。福岡県みやま市瀬高町大江に伝わる重要無形民俗文化財(1976年指定)の民俗芸能として現存している。能や歌舞伎の原型といわれ、700年の伝統を持ち、毎年1月20日に大江天満神社で奉納される。


 石川透
 1959年生まれ。慶應義塾大学文学部教授。文学博士

 星瑞穂
 1985年生まれ。慶應義塾大学文学研究科後期博士課程単位取得退学。国立公文書館統括公文書専門官室研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


 「冨樫」
 

 

 

 

 

 「常葉」
 

 

 

 その他 メモ
 海の見える杜美術館蔵「保元・平治物語絵巻をよむ 清盛栄華の物語」
 石川 透 / 星 瑞穂 編
 三弥井書店発行  1冊1,890円(税込)

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