163: 『錦絵はいかにつくられたか』国立歴史民俗博物館 2009年 企画展 図録
『錦絵はいかにつくられたか』国立歴史民俗博物館 2009年 企画展 図録を読み、楽しむ☆
2009年2月24日(火)〜5月6日(水)国立歴史民俗博物館で『錦絵はいかにつくられたか』と言う特別展があった。本書はその図録
かなり充実したこの図録の満足感は大きい。楽しく興味深く、かなりの時間をかけて何度も何度も楽しませて頂いた。
この本も繰り返し読むと、博物館に実を置いたような気持ち良さだ…
国立歴史民俗博物館の企画展の刊行物は他にも大変読みたいものが複数册あったが、完売していた。どうにかして、読むことはできないものか…。
図録『錦絵はいかにつくられたか』を楽しみながら、芝居や当時のようすを想像する。
錦絵の複雑な刷りに驚きながら、錦絵と版木を照らし合わせる。間違わないのかと目をこらすと、色など書き込んである。「ちのりよろしく」には参った。こんな風に記されているのかと、ほくそ笑む。
版木は錦絵に限らず博物館などで見かけることが多いが、諸々の理由で数少ないと知る。
国芳に多く触れられていた。国芳は諷刺がや遊女役者絵逃れ(?)の作品が多い。
仮名草子にある 薮薬師の『竹斎』の娘 ‘こがらし’が描かれた 「きたいなめい医難病治療」の素晴らしさにも見とれる。この作品も、諷刺ではないかと疑われたとのこと。
本書参考図書の中には 以前楽しんだ吉川好文館の『幕末の諷刺画』も載っていた。この本によれば着物や羽織の模様や意匠(?)によって諷刺する相手がわかると書かれていたように思う。「きたいなめい医難病治療」を目を凝らしてみて見たが、わたくしにはわからなかった…。
国芳他多くの好きな浮世絵師の作品が載っていた。
他、当時の宣伝(乳の出る薬や化粧 他)など、絵双紙屋が多角経営であったとのこと。
丹念に読んでいると、結構時間を費やした。
実際に博物館に行くと、長くとも四時間くらいで切り上げるので、全て見尽くすには複数回どころではなく通わなければならないだろう、そう思えるくらい興味のある企画展だったようだ。
国立歴史民俗博物館は遠い、非常に残念。
ラマン
ラマンで作品に負担なく錦絵の色の分析が出来る
仁木直則…
『伽羅先代萩〜花水橋・御殿・床下』の三世河原崎権十郎さん(花道)を思い浮かべる…
国立歴史民俗博物館 公式HPより ▼ これはかなり見たかった……。
HPはココ
この企画展示は、多色摺浮世絵版画の一形態で、一般にもっとも馴染みのある錦絵が、どのようにして生み出されたのかを、錦絵をとりまく社会状況や世相の面からアプローチするとともに、昨年度購入した錦絵の版木をもとに、錦絵を生み出した技術的側面を、彫摺技法および絵の具の科学的分析をもとに考察するものです。つまり、錦絵の鑑賞に重きをおく美術展ではなく、‘流通’と‘世相’さらに‘技術’に焦点を当てて、江戸時代末期の錦絵について考えるものです。
展示構成
第一部 絵双紙屋
錦絵が江戸時代末期、どのような形で販売され流通していたかを、絵双紙店を描いた錦絵や版本、あるいは絵双紙屋の引札などを通して多角的に提示いたします。
1.絵双紙屋の店頭から
錦絵は絵双紙屋と呼ばれる店で市販されていました。このコーナーでは幕末の錦絵販売の様子を詳しく描いた三代歌川豊国画の錦絵「今様見立士農工商(いまようみたてしのうこうしょう) 商人(しょうにん)」を核に、江戸末期の絵双紙屋の店頭における商品傾向や、販売の実態にせまります。
2.芝神明前(しばしんめいまえ)
芝の飯倉神明宮(いいくらしんめいぐう)(通称、芝神明)の門前は、江戸でも屈指の盛り場でしたが、とくに錦絵を商う絵双紙屋が数多く軒を連ねていたことで有名です。このコーナーでは、名所図会や錦絵など、さまざまな画像を用いて、絵双紙屋のメッカであった芝神明前について提示します。
第二部 錦絵出版事情
『藤岡屋日記』や曲亭馬琴(きょくていばきん)の書簡などには、江戸末期の世相とそれに関係した錦絵出版の記事が豊富に見出されます。当館が所蔵する錦絵の中からそうした記事に対応するものをさがしだし、どのような社会状況のもとで錦絵が生み出されたのかを考えます。
1.世相と錦絵
錦絵は江戸の町の流行を映し出す鏡でした。このコーナーでは、歌舞伎や、見世物・開帳などの流行は、版元にとっては錦絵を売り出す商機でもありました。人気役者の死に際して出された「死絵(しにえ)」や、人々の関心を集めた小金原における幕府の鹿狩を描く錦絵など、江戸市中での評判や流行が錦絵を生み出した要因となったことを提示します。
2.風刺画の流行
天保の改革のさなかに売り出された歌川国芳の3枚続錦絵「源頼光公館土蜘作妖怪図(みなもとのよりみつこうやかたつちぐもようかいをなすず)」は、改革を風刺したとの噂がたち、大評判となりました。この錦絵を契機として、以後幕末まで風刺画が数多くつくられます。このコーナーでは、幕末の風刺画の流行と、「源頼光公館土蜘作妖怪図」が幕末錦絵の画面構成に与えた影響について提示します。
第三部 版木から見る錦絵
当館は昨年度、歌川国芳、三代歌川豊国、歌川広重の錦絵の版木を大量に枚入手し、「歌川派錦絵版木」と名付けました。345枚という量はまとまった錦絵の版木として世界最大であり、かつ、輪郭線等を摺る主版(墨版)だけではなく、通常残ることがきわめて稀であるとされる色版(色摺部分の版木)も豊富に残っているという点で、もきわめて貴重な資料です。この版木群をもちいて、江戸末期の錦絵の彫りと摺りの技術をじっくりとごらんいただきます。また、版木に対応する錦絵も並べて展示いたします。
第四部 科学の目で見る錦絵
当館では、自然科学の分析手法を用いて歴史資料を研究し、あるいは最新の情報工学を駆使していた画像をもとに展示を構成することをおこなってきました。今回は、ラマンイメージング装置による顔料分析や、デジタル技術を用いての錦絵の再現などをおこないます。
1.ラマンで見る錦絵の色
ラマンイメージング装置は、単色光源であるレーザー光を用いて、非接触・非破壊で物質の構造同定をおこなう装置です。科学技術振興機構(JST)革新技術開発研究事業(「文化財測定用携帯型ラマンイメージング・顕微赤外分光装置の開発研究」平成17−19年度)の 助成を受け、当館、埼玉大学、エス・ティ・ジャパンの協力により、文化財用に小型化した装置を開発・製作しました。今回はその装置を用いておこなっている錦絵の色材研究の一部を提示します。
2.まぼろしの錦絵再現
「歌川派錦絵版木」の中には、版木は完全に彫り上げられたものの、なんらかの事情で出版されなかった国芳の「御庭の飼鳥」があります。三次元形状計測の技術を駆使してこの「御庭の飼鳥」の版木の画像をデジタル処理し、いまでは見ることのできない摺り上がった状態の再現をこころみます。
3.錦絵デジタル・ギャラリー
当館が所蔵する「錦絵コレクション」のほとんどを高精度でデジタル画像化してとりこんだシステムで、拡大も縮小も自在。細かい彫りの線や紙のすき目まで見える画像をお楽しみいただけます。
おもな展示資料
三代歌川豊国画「今様見立士農工商 商人」 (当館蔵)
「懐溜諸屑(ふところにたまるもろくず)」 (当館蔵)
「怪談・妖怪コレクション」より歌舞伎役者の死絵各種 (当館蔵)
歌川国芳画「源頼光公館土蜘作妖怪図」 (当館蔵)
歌川貞秀画「富士の裾野巻狩之図」 (当館蔵)
「歌川派錦絵版木」より、国芳画「源氏雲浮世画合(げんじぐもうきよえあわせ) 幻」 (当館蔵)
国芳画「鏗鏘手練鍛(さえたてのうちきたひ)の名刃(わざもの) 阿波(あわ)の十郎兵衛(じゅうろうべえ)」 (当館蔵)
広重画「英雄五人傑(えいゆうごにんおとこ) 吉岡兼房(よしおかけんぼう)」 (当館蔵)
三代豊国画「東海道五十三対(とうかいどうごじゅうさんつい) 鳴海(なるみ)」 (当館蔵)
国芳画「御庭の飼鳥」 (当館蔵)
ラマンイメージング装置 (当館蔵)