石井裕也監督・脚本の映画『あぜ道のダンディ』は現代のお話なのに、日本の民話に基づいた基本的構成で、民俗学に本の僅かばかり興味のあるわたくしは、場面ごとに興味を覚えた。
帽子については前回「再生」に関わりあるのではないかと書いた。
この話は他にも「死と再生」に関係した表現が多くみられる。
そのいくつかをメモ書きしておきたい。
夢の中で
家族全員、家に向って「うさぎのダンス」を歌い踊る。
家を神倉(上座)を見立てた儀式と承った。
自転車 再生
この映画の随所随所に自転車を乗る場面があるが…
テレビで競馬中継を見ていて「お金は賭けないのかい?」「ああ賭けない」
ゴルフの素振りの場面で 「ゴルフはやらないのかい?」「僕はお金がないから」
そしてラスト、あぜ道を晴れ晴れしく自転車に乗る。
まさに自転車は競馬(けうま)であるのではないかと思わせる。
こどもを東京に見送る 再生
まずは、猫で、アクシデントを起こす
日本でいう伊勢参り
イスラムでいうメッカのような意味合いを感じる。
娘のマンション セキュリティ万全
息子の下宿 安アパート
それぞれに親を思いやる
報われる 再生
息子の下宿の近くで風呂に入る
湯は死と再生に深く関わりがあると諸学者が記されている。
また 「是害房絵詞ぜがいぼうえことば」(「天狗草紙)」では傷ついた天狗が煮えたぎった湯釡には入り再生する。
111:『続日本絵巻大成19 土蜘蛛草紙・天狗草紙・大江山絵詞 』影印「土蜘蛛草紙」現在東京博物館蔵』
113:『続日本絵巻大成19 土蜘蛛草紙・天狗草紙・大江山絵詞 』影印「大江山絵詞」「解説」(4枚)』
135:『重要文化財 9 絵画3 大和絵 絵巻 他』文化庁監修 昭和49年 朝日新聞社 貫之
182: 『日本の異界をのぞく 妖怪絵巻』別冊太陽 2010年 小松和彦監修 平凡社(資料5枚)
『あぜ道のダンディ』の組み立ては、昔からの日本にあるパターンを組み合わせた安心できる筋書きでもあり、また、説経節に類似しているように感じる。
14; 『説経節』「信徳丸」東洋文庫(『弱法師』『摂州合邦辻』『文楽瑠璃集 』の「摂州合邦辻」比較)
21; 『説経節』から 「付 信太妻」 東洋文庫 平凡社
17: 『古浄瑠璃 説経集』から「さんせい太夫」 岩波 新版古典大系
18:『さんせい太夫考』から「説経序説」「さんせい太夫の構造」岩崎武夫著 平凡社選書
19: 東洋文庫『説経節』から「山椒太夫」「注」「解説:山椒太夫」昭和44年3月
『説経節』厨子王丸& 『幸若舞』信太(平将門孫)& 『説経節』小栗判官 = 重瞳、双瞳
『あぜ道のダンディ』をもう一度見いと思い衛星劇場の冊子を手にとったが、今月は一回きりで再放送は無かった。残念!
最後に
たいそう思い込みの激しい記録になっておりますので、鵜呑みになさらないようにお願い申し上げます。
再度映画を見た場合、わたくし自身の感想が変化する場合もございますので、その折はお許し下さいませ。