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映画『子宮に沈める』 4.9★/5 2013年 実話に基づく素晴らしい映画  【監督】 緒方貴臣  伊澤恵美子  土屋希乃 土屋瑛輝

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映画『子宮に沈める』 4.9★/5 2013年 実話に基づく素晴らしい映画  【監督】 緒方貴臣  伊澤恵美子  土屋希乃 土屋瑛輝

 

 

 映画『子宮に沈める』を見たが、ずいぶんと考えさせられた。

 こういった話は、自分からは程遠い世界だと信じて止まなかった。

 だが、ふとした人生の歯車のかけ違いに歪みをきたすのかもしれない。そういった不規則で負の連鎖が続くと、誰しもがそういった境地に陥る危険性を伴うのでは無いか。そう考えると、身の毛がよだつ映画であり、決して頼んごととは捉えず、社会問題の一面を鮮明に描いた秀作だと感じる。

 

 子供思いの母親は、子供に異常なほどの豪華なピクニック料理を作り、親子三人で楽しく食する。一見幸せな、母子。そういった場面から始まる。

 敷かれた絵柄の可愛らしいレジャーシートが他人事のようで、白々しささえ、映し出している。

 

 頑張る日常生活。子育ての大変さを、母親たるが故、背伸びをして真っ当にこなそうとする。

 そこへ、非協力的な夫が、妻の性を拒み、荷物をまとめて出て行く。

 日常生活、子育ての苦悩の連続は、やがて女の心を蝕む。

 

 自由な、高校時代の友人の登場。

 奔放な友人は、女のアパートで、子供が寝ているのもなんのその。配慮なく大声で暴力的に話し、水商売その他の仕事を進める。

 大声で話す友人は、タバコさえすい、言いたいことを言ったかと思うと、携帯電話に他の誘いを受け、うごめく魚のように暴れ、アパートを去る。

 

 女の旦那(夫)も、友人も、自由の象徴である。

 一方女は子供にがんじがらめの人生を送っている。

 

 女は、水商売に身を投じ、男ができる。

 子供がおり、男にもないがしろにされ始める。

 

 女は決意し、大盛りの焼き飯を用意し、部屋中にガムテープを貼って子供が外出できないようにして、アパートを飛び出す。

 ここで押さえておきたいのは、執拗なまで貼られたガムテープ。

 これは、子供を監禁するというよりも、子供が部屋から出ないよう、と言った、安全性を考えて取った行動では無いかと思う。

 また、そうであってほしいと、私は感じる。

 

 山盛りの焼き飯と子供二人を残し、アパートを後にした女は、男の元へ向かう。

 母親である前に、女でありたいという一大決意の女。

 

 ここからが、子楽二人の名演技であり、感動する。

 涙なしでは、見ていられない。

 ここで、私などの陳腐な記録や感想を記すのはやめたい。

 

 子供の行動。

 子供の表情¥。

 時間の経過。

 空腹。

 死と隣り合わせの、母親のいないアパートの一室。

 時間の経過。

 弟の死。

 時間の経過。

 コバエ、ゴキブリ、ハエ、ウジ、、、、、

 母への信頼。

 恐怖。

 時間の経過。

 時間の経過。

 時間の経過。

 

 時間の経過。

 時間の経過。

 時間の経過。

 そして、母。

 

 無言の母。

 女おこに食事を与えず、声さえかけない、母。

 

 ウジを処理し、弟を処理し、

 女の子を風呂に入れ、、、、、

 女の子を引きずり、

 シートに二人の子供を包む母。

 

 では、愛情がないのか?

 いや、二人の首には、おそらく夫のために編んだのであろう真っ赤なマフラーを丁寧に巻いてあげていた。

 そう、

 へその緒のような、真っ赤なマフラー

 これはへその緒さえ感じさせ、女の母性本能の変形した表現であったと思われる。

 

 裸の女は、かぎ針で胎児を下ろす。

 女は、泣きわめく。

 女は、十分に母なのだ!

 

 歯車が狂い、人生の歪みに放り出された、実はどこかしこにいる普通の母なのだ、、、、

 

 此の映画は重い。

 そして、深い。

 これまで、平々凡々と人生を歩んできた私でさえも、歪みに生きる女であり母である苦悩を感じた。

 此の映画は、私は素晴らしいと思う!

 

 

緒方貴臣 映画

 『終わらない青』2011年

 『体温』2015年

 『子宮に沈める』2015年

 『迷宮カフェ』2015年

 『飢えたライオン』2018年

緒方貴臣  監督 脚本

 

『子宮に沈める』2015年

【解説】 2010年に大阪で起こった2児放置死事件をもとに、シングルマザーが育児放棄(ネグレクト)に至る過程を淡々と見つめる社会派ドラマ。『体温』が国内外の映画祭で上映された新鋭・緒方貴臣の監督第3作目。 夫の浮気が原因で離婚した由希子(伊澤恵美子)。幼い娘と息子をひとりで育てることになり、長時間の労働と家事に追われる毎日。学歴も資格もない由希子は経済的にも困窮し、次第に周囲から孤立していく。

 

 これだけの素晴らしい問題作を創られていらっしゃるのに、どの作品も評価は低い。

 また、『飢えたライオン』の2018年を最後に、作品が途絶えているのが、口惜しい。

 時代に合わないのか?

 こういった素晴らしい作品を創り出される監督である緒方貴臣 が、ウィキペディアにも載ってないのは、釈然としない。

 商業映画として成り立たなくとも、こういった映画は作らせてあげるといった骨のある大手企業が日本に必要だと思うが、内容的に誤解を招きやすい、あるいは、捉え違いやすさの歩こういった内容の映画にはスポンサーがつきにくいのか知らん。

 勿体無いことだ!!と感じる。

 

 

 

 

2013年11月9日

95 分 ジ

 

【監督】 緒方貴臣

【キャスト】

 伊澤恵美子 ── 由希子

 土屋希乃 ── 幸

 土屋瑛輝 ── 蒼空

 

 


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