『傾城反魂香〜土佐将監閑居の場』
出演:坂東三津五郎 河原崎権十郎 尾上松也 坂東秀調 坂東彦三郎 中村時蔵
全ての役者さんに
2011年(全2話)
81分
カラー
命を懸けて起した奇跡と、夫婦愛が胸を打つ近松門左衛門の名作。 三津五郎の又平に、時蔵のおとくで、口下手な夫と、喋り上手な妻、夫婦の思いやりが感動を呼ぶ作品をご覧いただく。 絵師土佐将監の弟子又平は、師の閑居を妻おとくと訪れ、土佐の名字を名乗るのを許して欲しいと、言葉が不自由な又平に代わって、おとくが願い出る。しかし、絵から抜け出た虎をかき消した弟弟子の修理之助や、主君の大事に馳せ参じる雅楽之助のような功績のない又平は門前払い。絶望した夫婦は死を決意し、今生の名残りに又平は手水鉢に自画像を心魂込めて描く。するとその絵は石を貫き、手水鉢の裏側に抜けるという奇跡が起こり…。(2011年/平成23年11月・新橋演舞場)
平成23年11月・新橋演舞場、三津五郎さんと時蔵さんの『傾城反魂香〜土佐将監閑居の場』を見て、後半の「ちょっと待ってくだしゃんせ。待ってくだしゃんせや、必ず待ってくだしゃんせや…」くらいから涙が出続け、感激した。
『傾城反魂香〜土佐将監閑居の場』は好きな演目のひとつ。
だが、かねてから疑問に感じていた点がひとつ。三津五郎さんの舞台ではない、以前見た『傾城反魂香』の話。全体的には満足いくのだが、何度見てもその大御所といわれる某役者の又平の演じ方において、知恵がかけるように感じられる。本来土佐派に学ぶ又平、どもるという癖(ハンディ)を持っていても、知恵と品格は持っていなければならない。今回坂東三津五郎さんはわたくしの長年の疑問を解決して下さり、見事に演じきられたと感心した。
また、時蔵さんの女房役表情と台詞も素晴らしい。別段他の故役者さんと比較している訳ではないが 癖を出しすぎず、ここ一番という時にはきりっとした目線と迫力ある声色。時蔵さんも好きな役者さんの一人なので、『傾城反魂香』などを見ると嬉しくてたまらない。故役者さんの演じ方も面白かったが、時蔵さんの演じ方は琴線に触れ、涙が止まらなくなった。
今回涙があふれんばかりに出たのは、お二人の間のあった原作近松に従った忠実な演じ方によるものと思われる。
見終わって満足感のある歌舞伎舞台!。