『坐敷芸忠臣蔵』26 ///『仮名手本忠臣蔵』七段目(祇園一力茶屋の段)///山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画
写真は、『坐敷芸忠臣蔵』七段目
七段目・大臣の錆刀
七段目(祇園一力茶屋の段)ここは京の都、遊郭や茶屋の連なる夜の祇園町。
その祇園町の一力茶屋に師直の家来鷺坂伴内とともにいるのは、もと塩冶の家老斧九太夫である。
九太夫は師直の側に寝返り内通していた。
二人は大星由良助が、仇討ちを忘れてしまったかのように祇園で放蕩に明け暮れているという噂を聞き、それを確かめにきていたのだったが、由良助は二階座敷で遊女たちを集め酒宴を開き、高い調子で太鼓や三味線を囃させ騒いでいる。
これを下から見ていた九太夫も伴内も呆れるが、なおも由良助の心底を見極めようと、座敷に上がり、ひそかに様子を伺うことにした。
そのあと、もと塩冶の足軽寺岡平右衛門の案内で、これも塩冶浪士の矢間十太郎、千崎弥五郎、竹森喜多八の三人が一力茶屋を訪れる。
矢間たちも由良助の放蕩を聞き心配して尋ねに来たのだったが、敵討ちのことを尋ねられた由良助は酔っ払ってまともに相手にならない様子である。
怒った矢間たちは「性根が付かずば三人が、酒の酔いを醒ましましょうかな」と由良助を殴ろうとするも、平右衛門に止められる。
敵討ちの同志に加わりたいと平右衛門は由良助に願い出るが、由良助は話をはぐらかして相手にせず、敵討など
「人参飲んで首くくるような」
馬鹿げたものだと言い放つ。
矢間たちはいよいよ腹を立て、
「一味連判の見せしめ」
と由良助を斬ろうとするが平右衛門は矢間たちをなだめ、ひとまず別の座敷へと三人をいざないその場を立った。
由良助は酔いつぶれて寝ている。
そこへ人目を避けながら力弥が現われるとむっくと起きた。
力弥はかほよ御前からの急ぎの密書を由良助に渡し、またその伝言として師直が近々自分の領国に帰ることを告げて去る。
由良助が密書を見んと封を切ろうとするところ、九太夫が現われる。
由良助は九太夫と盃を交わす。
今日は旧主塩冶判官の月命日の前日、すなわち逮夜で本来なら魚肉を避けて精進すべき日であった。
九太夫は由良助の真意を探ろうと、わざと肴の蛸を勧めるが、由良助は平然とこれを食し、幇間や遊女たちと奥へと入る。
伴内が出てきて
「主の命日に精進さへせぬ根性で、敵討ち存じもよらず」
と九太夫と話すが、ふと見ると由良助は自分の刀を置き忘れていた。
「ほんに誠に大馬鹿者の証拠」
と、こっそり由良助の刀を抜いて見ると、刀身は真っ赤に錆びついている。
「さて錆たりな赤鰯、ハハハハハ…」
と嘲笑する二人。
だが九太夫は、まだ由良助のことを疑っていた。
最前、力弥が来て由良助に書状を渡すのを見かけたからで、それについての仔細を確かめるべく、座敷の縁の下に隠れて様子を伺うことにする。
伴内は九太夫が駕籠に乗って帰ると見せかけ、空の駕籠に付き添い茶屋を出て行った。
あの勘平の女房おかるははたして遊女となっていたが、今日は由良助に呼ばれてこの一力茶屋にいた。
飲みすぎてその酔い覚ましに、二階の座敷で風に当っている。
その近くの一階の座敷、由良助が縁側に出て辺りを見回し、釣燈籠の灯りを頼りにかほよからの密書を取り出し読み始めた。
そこには敵の師直についての様子がこまごまと記されている。
だがそれを、二階にいたおかると縁の下に隠れていた九太夫に覗き見されてしまう。
密書を見るおかるの簪が髪からとれて地面に落ちた。
その音を聞いた由良助ははっとして密書を後ろ手に隠す。
「由良さんか」
「おかるか。そもじはそこに何してぞ」
「わたしゃお前にもりつぶされ、あんまり辛さに酔いさまし。風に吹かれているわいな」
由良助は、おかるにちょっと話したい事があるから、そこから降りてここに来るよう頼む。そばにあった梯子で、わざわざおかるをふざけながら下へと降ろす由良助。
そしておかるに
「古いが惚れた」
自分が身請けしてやろうと言い出した。
男があるなら添わしてもやろう、いますぐ金を出して抱え主と話をつけてやるといって、由良助は奥へと入った。
夫勘平のもとへ帰れるとおかるが喜んでいると、そこに平右衛門が現れる。
おかるはこの平右衛門の妹であった。おかるは由良助が読んでいた書状の内容について、平右衛門にひそかに話した。
平右衛門
「ムウすりゃその文をたしかに見たな」
おかる
「残らず読んだその跡で、互いに見交わす顔と顔。それからじゃらつき出して身請けの相談」
「アノ残らず読んだ跡で」
「アイナ」
「ムウ、それで聞えた。妹、とても逃れぬ命、身共にくれよ」
と平右衛門は刀を抜いておかるに斬りかかろうとする。
驚くおかる、ゆるして下さんせと兄に向って手を合わせると、刀を投げ出しその場で泣き伏した。
平右衛門は、父与市兵衛が六月二十九日の夜、人手にかかって死んだことをおかるに話した。
おかるはびっくりするが、
「こりゃまだびっくりするな。請出され添おうと思ふ勘平も、腹切って死んだわやい」と、勘平もすでにこの世にいないことを話す。
あまりのことに兄に取り付き泣き沈むおかる。
だがあの由良助がおかるをわざわざ身請けしようというのは、密書の大事を漏らすまいと口封じに殺すつもりに違いない。
ならば自分が妹を殺し、その功によって敵討ちに加えてもらおうと、平右衛門は悲壮な覚悟でおかるに斬りつけたのである。
「聞き分けて命をくれ死んでくれ妹」
と、おかるに頼む平右衛門。
おかるは、
「勿体ないがとと様は非業の死でもお年の上。勘平殿は三十になるやならずに死ぬるのはさぞ口惜しかろ…」
となおも嘆くが、やがて覚悟を決めて自害しようとする。
そこに由良助が現れ、
「兄弟ども見上げた疑い晴れた」
と敵と味方を欺くための放蕩だという本心をあらわし、平右衛門は東への供を、すなわち敵討ちに加わることを許し、妹は生きて父と夫への追善をせよと諭す。
さらにおかるが持つ刀に手を添えて床下を突き刺すと、そこにいた九太夫は肩先を刺されて七転八倒、平右衛門に床下から引きずり出された。
由良助は九太夫の髻を掴んで引き寄せ、
「獅子身中の虫とはおのれが事、我が君より高知を戴き、莫大の御恩を着ながら、かたき師直が犬となって有る事ない事よう内通ひろいだな…」
と、あえて主君の逮夜に魚肉を勧めた九太夫を、土に摺りつけねじつける。九太夫はさらに平右衛門からも錆刀で斬りつけられ、のた打ち回り、ゆるしてくれと人々に向って手を合わせる見苦しさである。
由良助は、ここで殺すと面倒だから、酔いどれ客に見せかけて連れて行けと平右衛門に命じる。
そこへこれまでの様子を見ていた矢間たち三人が出てきて言う、
「由良助殿段々誤り入りましてござります」。
由良助
「それ平右衛門、喰らい酔うたその客に、加茂川で、ナ、水雑炊を食らはせい」
「ハア」
「行け」
大石内蔵助が敵の目を欺くため、京の祇園の遊郭で遊び呆けてみせるというのは「忠臣蔵」の物語ではおなじみの場面である。(ウィキペディア引用)
七段目 終了
八段は『坐敷芸忠臣蔵』では抜かされている。
尤も、八段は芝居でも抜かされることが多い。
次は、九段目
『坐敷芸忠臣蔵』(『坐敷藝忠臣蔵』)
山東京傳 戯作
歌川豊国 戯画
山東京傳 1761-1816
歌川豊国 1769-1825
小舟町(江戸) : 文亀堂, 文化7[1810]
19cm
和装
印記:只誠蔵,斎藤文庫,洒竹文庫
関根只誠,斎藤雀志,大野洒竹旧蔵
早稲田大学図書館 (Waseda University Library)
『坐敷芸忠臣蔵』ヘ13 02377
『坐敷芸忠臣蔵』 1 山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 小舟町(江戸) : 文亀堂, 文化7[1810] 早稲田大学図書館 『坐敷芸忠臣蔵』 2 『坐敷藝忠臣蔵』と『仮名手本胸之鏡』は同じか否か。それともよく似ていると言うだけか。部分的に一緒ではあるが、違う本なのだろう。 『坐敷芸忠臣蔵』 3 表紙 山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 小舟町(江戸) : 文亀堂, 文化7[1810] 早稲田大学図書館 『坐敷芸忠臣蔵』 4 裏表紙 及び 「坐敷芸忠臣蔵序」1、2、3 山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 小舟町(江戸) : 文亀堂, 文化7[1810] 早稲田大学図書館 (2枚) 『坐敷芸忠臣蔵』 5 出演者全員顔見世的一枚(一部、日本語漢文で記されている)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 小舟町(江戸) : 文亀堂, 文化7[1810] 早稲田大学図書館 『坐敷芸忠臣蔵』 6 大序(各出演者の簡単な芸などの説明)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 小舟町(江戸) : 文亀堂, 文化7[1810] 早稲田大学図書館 『坐敷芸忠臣蔵』 7(大序 かほよの兜「蘭奢待の香るこの兜こそ義貞着用のものに間違いない」)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 小舟町(江戸) : 文亀堂, 文化7[1810] 早稲田大学図書館 『坐敷芸忠臣蔵』8(序切 とんび役のものはほ(師直)がからす役のもゝの井(桃井若狭之助安近)に向かい小馬鹿にした事ばかりを並べ立てる)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』 9( 二段 もゝの井「此しゃくしを耳となしかうもり(蝙蝠)の身振りにてつらはぢをかゝせるつもり」)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』 10(二段 『仮名手本忠臣蔵 二段目・諫言の寝刃』と、『坐敷藝忠臣蔵』二段目)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』 11(『坐敷藝忠臣蔵』 三段 「三段目口」「三段目」 三段目1/3、2/3)(2枚)(2枚)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』 12(『坐敷藝忠臣蔵』 「三段目切」(もろなほがもゝの井に悪態をつきまくる)三段目3/3)(1枚)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』 13(『坐敷藝忠臣蔵』三段目( 歌舞伎:『仮名手本忠臣蔵 三段目』 ) 山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』 14(『坐敷芸忠臣蔵』四段目(へどのついたる にざかなを うちまもり/\ むねんのしな) 山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』15 四段目切(はつと いちどに立いでしが、思へば無念、と、立かへる)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』16 ///『仮名手本忠臣蔵』四段目(判官は力弥に尋ねた「力弥、力弥、由良助は」「いまだ参上仕りませぬ」「エエ存命に対面せで残念」)///山東京傳 歌川豊国 『坐敷芸忠臣蔵』17 五段目(定九郎登場^^「五十両〜」に変わって、「はマグ理ならば、四、五升のかさ(量、傘)」)山東京傳 歌川豊国 『坐敷芸忠臣蔵』18 五段目(定九郎、かん平、お軽の親父登場「ぼたん もみぢ てつぽう 吸物 いろ/\」)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』19 ///『仮名手本忠臣蔵』五段目(金なら四五十両のかさ、縞の財布に有るのを、とっくりと見付けて来たのじゃ。)///山東京傳戯作 歌川豊国戯画 『坐敷芸忠臣蔵』20 六段目(寛平、切腹するのではなく、『坐敷芸忠臣蔵』ではフグの腹を切る。)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』21 ///『仮名手本忠臣蔵』六段目(身売りの段)(勘平切腹の段 「色にふけったばっかりにぃ〜〜」)///山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』22 七段目(由良助、酒浸った振りをして、お女中の「手のなる方へ」で千鳥足)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』23 七段目 2/4(ゆらの助、 手をだしてあしを見せたるたこ身ぶり、「きみよう/\と、ほめにけり」)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』24 七段目 3/4(おかるハ うへより 見おろせど 字ハあハゆきの とうふもおぼろ)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』25 七段目 4/4(おかるてふ/\の身ぶり、平ゑもん柿の木の身ぶり)山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画 『坐敷芸忠臣蔵』26 ///『仮名手本忠臣蔵』七段目(祇園一力茶屋の段)///山東京傳 戯作 歌川豊国 戯画