『ギリシア神話』5 『エーレービクトラー』(エウリービーデース著)
『ギリシア神話』(高津春繁著 岩波文庫)によれば
『エーレービクトラー』(エウリービーデース著)はメロドラマ。
著者は従来の話を一変し、王女エーレクトラーを百姓の妻にする。
エーレクトラーといえば、前回書いたように、イーピゲネイアの妹に当たる。
王妃とアイギストスが、エーレクトラーに身分の高い夫を持たせれば、そのこが、アイガメムーン(『ギリシア神話』2 アガメムノーン)の仇討するかもしれないと怖れたためだ。
しかし百姓は、王女の身分を尊んで、身体に触れようともしない。
このような扱いを受けた彼女(エーレクトラー)は、やがて非人間的な復讐鬼となる。(岩波文庫 部分要約)
エーレクトラー(古希: Ἠλέκτρα, Ēlektrā)
エーレクトラーは、ギリシア神話に登場する女性である。
長母音を省略してエレクトラとも表記する。
同名の女性が数名いる。
オーケアノスの娘。
アトラースの娘。
プレイアデスの1人。
アガメムノーンの娘。
ダナオスの娘。
神話
エーレクトラーはミュケーナイの王女であったが、父王アガメムノーンが、母クリュタイムネーストラーの愛人アイギストスによって、あるいはクリュタイムネーストラー自身によって、トロイア戦争から凱旋した夜に殺害されたため、ミュケーナイを脱出した。
クリュタイムネーストラーとアイギストスは、アガメムノーンが戦利品として連れ帰ったイーリオスの王女で予言者のカッサンドラーをも殺害した。
8年後、エーレクトラーはアテーナイから、弟のオレステースとともにミュケーナイに戻った。
古代ギリシアの9歌唱詩人の一人、ピンダロスによれば、 オレステースは彼の老いた乳母に、もしくはエーレクトラーに助けられ、パルナッソス山に連れられて、そこでストロピオス王に預けられた。
彼が20歳になった時、デルポイの神託により、故郷に帰って父の死の復讐を遂げるよう告げられる。
エーレクトラーとオレステース(1897年画) アイスキュロスによればエーレクトラーとオレステースは、アガメムノーンの供養に来てその墓前で再会し、オレステースがどのように復讐を遂げるかの計画を練った。
ピュラデースとオレステースが、エーレクトラーの手引きにより、クリュタイムネーストラーとアイギストスを殺害した。
その後、オレステースは母殺しの罪から狂気に陥り、家族へのあらゆる冒涜を罰する復讐の女神エリーニュスに追われた。
しかしエーレクトラー自身はエリーニュスの追跡の対象とはなっていない。
オレステースはデルポイの神殿に避難したが、たとえ彼の行為がデルポイの神託を通じてアポローン神が命じたものであっても、オレステースはその報いから逃れることはできなかった。
最終的には女神アテーナーがアテーナイのアクロポリスに彼を引き取り、12人のアッティカ人陪審員による正式な裁判にかけた。
エリーニュスは犠牲を要求し、オレステースはアポローンの神託による行為を主張した。
陪審員の票は有罪・無罪6票ずつに別れたが、アテーナーはオレステースの無罪に自分の票を投じた。
『タウリケーのイーピゲネイア』の中で、エウリーピデースはやや異なる内容を物語っている。
オレステースは黒海沿いのタウリケに導かれるが、そこには彼の姉のイーピゲネイアが捕らわれていた。二人の出会いは、ピュラデースとオレステースが女神アルテミスへの捧げものとして、イーピゲネイアの元に連れられてきたことによる。
イーピゲネイア、ピュラデース、オレステースの三人はタウリケを脱出、エリーニュスは家族の再会を寿ぎ、彼らへの迫害を軽減した。
のちにピュラデースとエーレクトラーは恋に落ちて結婚する。
ピュラデースは、母とその愛人からオレステースが身を隠す間、彼をかくまったストロピオス王の息子であり、オレステースとエーレクトラーを助けて、二人の復讐に手を貸した。
反対にエレクトラコンプレックスで説明されているエーレクトラーは、父親であるアガメムノーンへの思いを忘れることが出来ず、生涯に亘り未婚を貫いたとされている。
エウリーピデースによれば、クリュタイムネーストラーとアイギストスはかつてエーレクトラーと小作農とを結婚させていたが、それは彼女の子供も、高貴の生まれでなければ復讐を考えないだろうと思ったからである。
しかしエーレクトラーを尊敬していた小作農は、結婚を完成させることを断っていたのだった。
『ギリシア神話』 高津春繁著 岩波文庫 参考
ウィキペディア参考
『ギリシア神話』1 オレステース 『ギリシア神話』2 アガメムノーン 『ギリシア神話』3 カッサンドラーの悲鳴 クリュタイムネーストラー 『ギリシア神話』4 生贄としての悲惨な最後を迎える イーピゲネイア 『ギリシア神話』5 『エーレービクトラー』(エウリービーデース著)