『絵入 好色一代男』 3 巻一 世之介 九歳
「人にハ見せぬところ」「ぎやうずいよりぬきみ事」
五月四日(節句の前日)に、軒上に菖蒲を葺くという。
これは、近松の『女殺油地獄』の与兵衛が油屋お吉を殺し、金を奪って家を出た途端、軒上から菖蒲がぽとんと落ちる。(あとは、花道で、見得よろしくと繋がる)
西鶴『絵入 好色一代男』の一巻三(世之介 九歳)でも記されていた。
『起上り小法師』
以前、子供が幼い頃のこと。こども劇場会員に加入していた。
たまたま大人向けの『狂言』の回があったので、ママ友と見に行ったことがある。
その時、最後に、『二人大名』ではなくその歌謡の、『起上り小法師』の部分を披露してくださったことは、このブログでも何度か書いたことがある。
茂山千之丞さんは、満面の笑みで若いお母様方の会場におりてこられ、閉じた扇子で拍子を取りつつ、『起上り小法師』の歌をリズムを覚えるほどに歌ってくださった。
当然、会場のお母様方は、大きな声で手を叩きながら、
京に京に流行るぅ、起上り小法師やよぉぉ、(殿だに見れば、つい転ぶ)
合点か、合点じゃ、合点、合点、合点じゃ
と大合唱されたものだから、私、恥ずかしくて仕方がない。
たまたま前から5番目辺り(Aブロック)右端に座っていたので、千之丞さんがそばを通られた時には恥じらいで俯いてしまったことを、強く覚えている。
今回、西鶴『絵入 好色一代男』の一巻三(世之介 九歳)を読んでいて、『起上り小法師』が出てきた。
岩波の古典文学大系の頭注によれば、
京に流行る、起上り小法師、やよ殿だに見れば、つい転ぶ
合点か、合点合点合点合点合点
とあり、起上り小法師とは起き上がるだるまの人形とのみ、記されている。
ところが、
『日本古典文学全集 狂言集』(小学館)
『新日本古典文学大系 梁塵秘抄 閑吟集 狂言集』(岩波書店)
の二冊を見れば、
『日本古典文学大系』「好色一代男」(岩波書店)
(いずれも、頭注)と、解釈は異なる。
京に流行る、起上り小法師、やよ、殿(との)だに見れば、つい転ぶ
合点か、合点じゃ、合点、合点、合点じゃ
とあり、上二冊にはが手を叩き大合唱するなど、到底できないと思っていたこと以上の解説が記されていた。
西鶴『絵入 好色一代男』の一巻三(世之介 九歳)を読み、長年抱き続けていた『起上り小法師』への疑念が解決できたと、胸を撫で下ろしている。
『起上り小法師』についてはいずれ日を改めて記すかもしれない。
予定は、未定。合点^^承知の助左衛門。
乳母、まだ年が小さい^^
世之介、九歳。
思案橋(大坂) : 荒砥屋孫兵衛可心, 天和2[1682]
早稲田大学ライブラリィ
絵入 好色一代男 井原西鶴
天和二壬戌年陽月中旬
大阪思案橋 孫兵衞可心板
岩波日本古典文学大系
『絵入 好色一代男』 1 巻一 世之介 七歳 「けした所が恋はじめ」「こしもとに心あること」 『絵入 好色一代男』 2 巻一 世之介 八歳 「はづかしながら、文言葉」「おもひは山吹の事」 『絵入 好色一代男』 3 巻一 世之介 九歳 「人にハ見せぬところ」「ぎやうずいよりぬきみ事」 『五月四日』『起上り小法師』