『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 16 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門
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16
少ゝハ見のかしにもにて。御めんなされてくだしおかるゝ様の取なしをも、申べき所。
きやつが母ハせつしやが兄弟。げんざいのおい、働共、たよけかたしと、間もあへぬに。
シテ、其とがといふハ、何こと。御尋に及すごふくにどろをなげかけ。御身をけがし よこしたる とが。
ちや/\、此 八弥が身をけがせしとハ、心得ず。是見よ、きるいのいづくにどろがつい
たるぞ。イヤ、召かへられぬ いぜんのお小袖。されバ/\。きかやれバ、どろをかゝら
ぬも同然でハ有まいか。御意とハ申ながら、すでに御馬のくら、あぶみも どろに
そみ、おかちて、お帰なさるゝハ。旦那にちじよくをあたゆるりよぐハいはと申。
あくれバ、たまれ/\。馬のかいぐにハどろのかる物ゆへに。あおりといふじハ
どろをへだつとかく。どろのかゝらぬ物ならバ、何にへだつるといふじの
入べきぞ。ちじよくもりよぐハいもとがもなし。ぶしたる者のちじよくとハ
たゞ一しづくのにごり水も。名字にかゝるハ、あらふにおちず。すぐにさゝず。
あきれて入のざう、人身がめかくハ、どろ水。どろより出て、どろにそまぬはち
すの八弥。みやうじハけがれぬたすけてやれ。はつ と、又、ありがたき。
ぎよゐを大じに、ふる手をそろへ、きやうれつ。たてゝっぞ。
『女殺油地獄』 上之巻、読了
きるい
着類
あおりといふじハ、どろをへだつとかく。
あおりという字は、どろをへだつとかく。
泥障という字は、泥を障だつと書く。
泥障(あおり)
泥障〘名〙
① 馬具の一種。下鞍(したぐら)の小型の大和鞍、水干鞍を使うとき、泥が飛びはね、衣服を汚すのを防ぐため、下鞍の間に垂らす大型の皮革。晴天、軍陣、騎射の際にはじゃまになるので用いなかったが、のちに装飾用として、晴天の時にも用い、漆塗りの革を張るようになった。〔令集解(738)〕
煽り
1あおる作用(の結果)。
2煽動(せんどう)。呷り(煽り)
『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作
近松門左衛門 1653-1724
高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門, [出版年不明]
22cm
竹本筑後掾正本
共同刊行:山本九兵衛(大坂高麗橋)
題簽の一部を欠く 虫損あり
和装
印記:文楽蔵,渡邉蔵書
渡辺霞亭旧蔵
早稲田大学デジタルライブラリー ヘ07 04334
『女殺油地獄』 1 上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 早稲田大学所蔵と東洋文庫所蔵は、同じ。 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 2 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 3 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 4 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 5 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 6 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 7 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 8 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 9 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 10 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 11 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 12 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 13 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 14 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 15 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門 『女殺油地獄』上読了 上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 16 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門