『源氏物語』「桐壺」一冊 - 5(四丁裏 五丁表) 紫式部著 三条西家旧蔵 三条西実枝(写)
5(四丁裏)
の世にも、御ちきりや、ふかりけん、よになく
きよらなる、たまのおこのみ、みこさへ む
まれ給ぬ、いつしか、と、こゝろもなから
せ 給て、いそきまいらせて御らんするに、
めつらかなるちこの御かたちなり、一のみ
こは、右大臣の女御の御はらにて、よせ
おもくうたかひなきまうけの君と、世に
はてかしつきこゆれと、この御にほひ
にはならひ給へくもあらさりけれは、
おほかたのやんことなき御おもひにて、
5(五丁表)
このきみをは、わたくしものにおほくし、
かしつき給事、かきりなし、はしめより
おしなへてのうへうへみやつかへし給へきも
には、あらさりき、おほし、いとやんことな
く 上衆めかしけれと、わりなく まつは
さまたまふ、あまりにさるへき御あそ
ひのおり/\、なに事にもゆへあることの
ふし/\にハ、まつ、まうの奉らせ給ふ、
あるときには、おほとのこもりすて
てやかく御ふらはせ、おもふなと、あな
めつらかなるちこの御かたち
珍かなる稚児の御形
御形はこの場合は、顔
珍しい稚児の御顔
よせ
おもく
後見がしっかりしていて
おしなへて
おしなべて
[副]
1 全体にわたって。一様に。概して。「今年の稲作は押し並べてできがいい」
2 (あとに格助詞「の」を伴って)ありきたり。なみなみ。
「はじめより―の上宮仕へし給ふべき際 (きは) にはあらざりき」〈源・桐壺〉
上衆めかし 形容詞
シク活用 活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
上流の人らしく見える。貴人らしく見える。
出典源氏物語 桐壺 「覚えいとやむごとなく、じゃうずめかしけれど」
[訳] 評判もたいそうよく、上流の人らしく見えるが。
早稲田大学図書館 (Waseda University Library)
ヘ02 04867 0051
三条西家旧蔵
三条西実枝(写)
書写年不明
54冊 25cm
三条西家旧蔵