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恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 44 二十丁裏 二十一丁表と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

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富田高至 編者

恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 44 二十丁裏 二十一丁表と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年




44 二十丁裏 二十一丁表

 

二十丁裏

◯をかし男、有馬へ行、人に生鯛くハせんとて呼て

 

二十一丁表

うときにしあらさりけれハ、家ぬしに貝灼子

さゝとて、女の料理くハせんとすあるしの男、歌よみて

味噌漉(コシ)にゆひ付さす、

   鯛の躰を 君がためにともりされハ

   われうハ汁を すひぬへきかな

この鯛ハ有るかなかに新しけれハ、心とゝめて

くハす、腹にあちハひて

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊       

   鯛の躰を 君がためにともりされハ

   われうハ汁を すひぬへきかな


『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   出でてゆく 君がためにと脱ぎつれば

   我さへもなく なるぬべきかな

 

貝灼子(かいじゃくし)

 ホタテガイなどの平たい貝殻に、竹や木の柄をつけた杓子。

 江戸では、扇子とともにお年玉としてよく用いられた。

 

さゝ  (酒)

 《女房詞から。中国で酒を竹葉といったことからとも、「さけ」の「さ」を重ねたものともいう》酒のこと。「酒機嫌」

 

 歌舞伎では、「酒」というよりも「ささ(酒)」という言葉で出てくることが多い。

 男1「ささ、ささを一献、召し上がってごじゃれ^^ささ、まずはささのお肴(舞)を一つ、ご馳走したく候。」

 男2「お肴、お肴^^お肴は大いに結構。一つ舞ってごじゃれ。」

 男1「では、一つ舞ってみせましょう^^」

       で、男1すり足にて、舞台中央に参り、能楽風の舞が始まる^^

       乱鳥、芝居が見た〜〜い^^v

 

貝灼子

さゝ

 貝灼子でささ(酒)といえば、歌舞伎『俊寛』を思い浮かべる。

 この場合、孤島に酒はないので、清水で酒の代わりとなす^^

 

あるしの

 主人の

 

鯛の躰

 鯛の実

 

心とゝめて

 心留めて

 

腹にあちハひて

 腹に味わいて


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