化物和本草 2 山東京伝作 葛飾北斎画 寛政10 版元 山口屋忠右衛門
化物和本草 3巻
山東京伝作 1761-1816
葛飾北斎画 1760-1849
版元 山口屋忠右衛門
寛政10 (1798)
18cm
黄表紙
早稲田大学所蔵
早稲田大学図書館 (Waseda University Library)
京傳子歳述 翻刻必究
ばけものやまとほんぞう ぜん
化物和本草 全
巻首有巴山人之圓章
雲顧君子須認比為真
化物和本草 一丁表
此(此)猥史(さうし)の趣向(しゆこう)は、元来(ぐハんらい)水点の放屁(ふうひ)のごとく、また
野猫(たぬき)の鼾睡(いびき)に似たり、これをたゝめバ、二巻(にくハん)となり、
これをひらけバ十枚あつて、阿菊(おきく)が皿(さら)の闕(かけ)たるもあり、
見越(みこし)の頸(くび)の余(あま)れるもあり、廼是その初(すなわらこれそのうし)酒田(さかた)の金平(きんぺい)
先生、蛍合戦(ほたるがっせん)の明かりをかりて、雪女児(ゆきおんな)の燈(ともしび)かゞげ、
剪冠(きりかぶり)の筆(筆)を執て、徒(いたつら)に一盤(いつさん)の油を減じ編(あめ)る處(ところ)の
書(しよ)なり、然(しか)も狐色(きつねいろ)の表紙(ひやうし)をかき、減るに、三つ目の難我
用(もち)ゆ、蛤(あさり)も、詞書(ことバがき)ハ、化物屋鋪(ばけものやしき)の日記(につき)の如く、画図(ゑがら)は
珍物茶屋(ちんぶつちゃや)の招版(かんばん)に似たり、弔、野(の)にハ伏(ふくめ)とも、宿(やど)かるなと
いへる、那(かの)一つ家(ひとや)の壁中(つきちう)より、此書(このしよ)を得(ゑ)たり 尓云
寛政十歳戌午孟春 京傳戯題 印
廼(だい すな)
廼とは、の/「の」の音を表すための語/なんじ/二人称代名詞/すなわちなどの意味をもつ漢字。 ... 日本では不確定レベルの漢字とされる。
徒(いたつら)[形動][文][ナリ]
1 存在・動作などが無益であるさま。役に立たないさま。むだ。「徒に時を過ごす」
2 あるべき物がないために物足りないさま。なんの風情もないさま。
「入江の―なる洲 (す) ども」 更科
3 何もすることがないさま。退屈。→いたずら
「舟も出ださで―なれば」 土佐
一盤(いつさん) 一番(いつさん)
弔 (とむらう ちょう)
尓云 (ウンジ)(しかいう 云爾)
文章の末尾に書かれ、上文の内容を強調指示する語。「これに他ならぬ」の意。
漢文で「しかり」「しかいう」と訓ぜられる。
孟春 (もうしゅん)
〔「孟」ははじめの意〕 ① 春のはじめ。初春。 ② 陰暦一月の異名。