石原さとみ主演「アジアの女」5★ 役者5★ 色彩5,8★(満点以上)作:長塚圭史 演出・出演:吉田鋼太郎
兼ねてからみたかった石原さとみ主演「アジアの女」をみて、満足した。
五人の役者たちが感情移入して挑んだこの舞台も、石原さとみ主演「密やかな結社」と同様に感動した。
ただ、感動の方向性は随分と違う。
「アジアの女」は社会情勢や感情や行動、特に希望と絶望を色分けされて演劇は勧められた。
「アジアの女」の筋書きは多くのブログで紹介されていると勝手に想像しているのですが、ならば私はあえてあらすじには触れず、色の流れで物語を捉えて記録しようと思います。
開幕
こなれた婿七の違和感のない言わば海老茶色系の統一感を持った舞台で始まる。
こなれた赤茶は、土・木、コンクリート、金属など質感こそ違いがあるが、うまくぼかされた大道具小道具に無機質という性格を吹き込む。
その中で、異様に輝かしい女性、それがアジアの女であり、赤茶ではなく、目にも鮮やかな真っ赤のドレスを着ている。
そして、違和感という言葉がぴったりのポリタンク以外の何物でもないオーレオリンのポチタンクらしい質感で、オーレオリン強調。
オーレオリンのポリタンクの中には、生命の水、言わば 希望の水が入っている。
ポリタンクのオーレオリンは人が増えるにつれ、、タンクはすべてで三つの増える。
作家さんの机の下は黄色のビールケースを土台とし、置かれた机の木の上には、黄色いっぺんケースが置かれている。
今や小説が書けなくなってしまった彼もまた、無意識の中、黄色にすがる。
希望と水の入ったオーレオリンのポリバケツは三つ塊近くに、から酒の入ったビール箱が人包まれている。
同様、兄は酒を飲むことにより、現実から逃れる。
飲んだ後の空き瓶は、彼にとっては希望の跡形。
生命の水よりも高い場所に黄色のケースを設置するあに。
一本飲むごとに、今や手に入れにくくなったウイスキー瓶の空を黄色のビールケースに放り投げ、自分を納得させる。
或る日女が、街に出てしまう。
そして見つけた、ボランティアという名のお仕事。
仲介役の女にスカーフは黒柄に金色、髪の毛は基本茶色のクルンクルンの神に部分的に金が効果的に使われている。仲介役
オーレオリン、金色といっった希望を身にまとう仲介役の女は、アジアの女にとっては「生きる希望」である。
彼らの地位様世の中が少しづつ動き始め、多少豊かになってきた。
舞台には、緑色も小物が増えだす。
緑色、それは生命の誕生や全身の意味も持つ。
開幕当初から少しずつ漏れていた水は、緑だったせいか、、
流れて溜まった水溜りは、地面で緑色を放っていた。
舞台全体を見てみても、緑が増えていた。
うまく行き始めていた。
ほんの少しだけうまい方向に流れるのではないかと思っていた。
しかししれはほんの一瞬のことであった。
舞台全体を見回すと、3個のポリタンクは、震災でつぶれ二階が一家にになった家の二階のベランダの物陰に息を潜めている。
黄色が減る!!
そのうち山内圭哉さんは、
「こんな絨毯の型録とかいって買ってしまって。」
と、ブツブツ言いながら、かなり汚れたユーズド仕様のまん丸の緑のカーペットを巻いて家に右端に押しやり、緑をまた消す。
緑色が減る!!
緑は舞台から少しづつ消えていく。
女は自立せねばと、街に消える。
帰ってきた女は真っ白のドレスを着ている。
イプセンの『人形の家』のノラとはまた違った自立の仕方が、私は心地が良い。
一見騙されている女が連れて着た女性は某仕事の入会屋であるのだが、それさえアジアの女にとっては希望の象徴。
なぜなら、女は自分の身で金を稼いで、生計に生かすことができるのだから。
仲介屋の女の姿は上にも書いたが、襟元には黒と金色のスカーフ。
くるくるのロングヘアーはベースは焦げ茶色だが、毛先は金髪であった。
金色=黄色
彼女もまた、アジアの女にとって、希望であったのだ。
アジアの女は、真実の生き様に目覚め始める。
ここでも彼女は眩いばかりの真っ白のドレス。
これから染まるゆく、彼女の生き方。
彼女は皆から別れ、あまり知識もなく考えもなく、ただただ純粋な気持ちで、日本に住む中国人の革命に参加し、あっけなく死を遂げる。
彼女が大切に育てていた畑からは、赤(彼岸花)が生えてくる。
アジアの女は、無機質な暗い海老茶色の中、真っ赤なドレスを身にまとう。
肩にはあえて違和感のあるポリタンクといった質感を強調したオーレオリン。
アジアの女は革命或いは死と行った教会を超え、真白な戦闘あるいは理想の国へとゆっくり歩む。
以下のデーターは、wowow公式HPより
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主演、石原さとみ。吉田鋼太郎が、これまで俳優として出演してきた盟友・長塚圭史の2006年初演の戯曲の演出&出演に挑む。チケット完売の超話題作を放送。
主演を務めるのは、ドラマや映画での活躍にとどまらず、舞台で演じることに並々ならぬ想いを持つ石原さとみ。舞台出演は、2018年の「密やかな結晶」以来となる。共演は、長塚作品の常連で舞台だけではなく、映像作品にも活躍の場を広げている山内圭哉。個性的な演技で高い評価を得ている若手俳優の矢本悠馬。小劇場を中心に確かな演技で活躍する水口早香。そして演出を兼ねた吉田鋼太郎が出演。石原の吉田との共演は初となる。
舞台は大災害が起きた後の東京。唐突に訪れた絶望的な世界の終わりに直面し、大切なものを失い傷ついた人々のそれぞれの生きざまが描かれていく。家から出られなくなった男、書くことができない作家。がれきの中に埋もれてしまった心が、純粋さと狂気のはざまでもがく女性によって揺り動かされていく。初演から13年を経て、あらためて今の私たちの胸に突き刺さる普遍的なテーマ。このリアルな世界観をかみしめてご覧いただきたい。
主演、石原さとみ。吉田鋼太郎が、これまで俳優として出演してきた盟友・長塚圭史の2006年初演の戯曲の演出&出演に挑む。チケット完売の超話題作を放送。
これまで多種多様な戯曲やシェイクスピア作品の演出を手掛けてきた俳優・吉田鋼太郎が、2006年に劇作・演出家の長塚圭史が書き下ろした戯曲を演出した舞台「アジアの女」をお送りする。
【ストーリー】
大災害によって壊滅した東京のとある立ち入り禁止地区。2階部分によって1階が押しつぶされた家に、兄の晃郎(山内圭哉)と妹の麻希子(石原さとみ)は住み続けていた。2人は国からの配給によって生活するが、晃郎は酒浸りとなり、かつて精神を病んでいた麻希子は畑に水をやり続ける。麻希子に想いを寄せる警官の村田(矢本悠馬)は、2人の世話を焼き見守っていた。そこに作家の一ノ瀬(吉田鋼太郎)が現われ、かつて担当編集者だった晃郎に「物語を書かせろ」と迫る。
そんな中、麻希子は仕事をあっせんする元締めの鳥居(水口早香)と出会い、生活のため「ボランティア」と称した仕事を始めることになる。町に出て働きだした麻希子に対し、家を出ることもできない晃郎。そんな2人とともに過ごしていた一ノ瀬は、麻希子をモデルにした物語を書こうとしていた……。
収録日・収録場所
2019年9月26日/東京 Bunkamuraシアターコクーン
出演
石原さとみ
山内圭哉
矢本悠馬
水口早香
吉田鋼太郎
スタッフ
作
長塚圭史
演出
吉田鋼太郎