『近松全集第七巻』「冥土の飛脚」 3オ 近松門左衛門作
仁 水が出ますれば、道中尓日がこミ。かね能とゝかぬ
のみならず、手前も大分能そん銀。もし盗賊が
切取道からふつと出来心。万ゝ貫目取られても。
十八軒能飛脚宿からわきまへ。けし程も御損
かけませむ、おきづかひあられるな。いはせもはてず
是さ/\。いふまでもない御そんかけてハ忠兵衛がくびが
とぶ。日銀のびてハ御用能間があく仁より、それ処
能せんさく迎ひ飛脚をつかハして早速尓持参
(3オ)
『近松全集第七巻』「冥土の飛脚」P.281
(1オ)(1ウ)(2 オ)= (一丁表)(一丁裏)(二丁表)…と言う意味です。
本文に「。」が付いている場合は「。」 付いて灰場合は「、」突表記しています。
(「尓」「能」などのように、副詞部分はそのまま元字で書いています)
『近松全集第七巻』「冥土の飛脚」 1 オ 近松門左衛門作
『近松全集第七巻』「冥土の飛脚」 1 ウ 近松門左衛門作
『近松全集第七巻』「冥土の飛脚」 2オ 近松門左衛門作
『近松全集第七巻』「冥土の飛脚」 2ウ 近松門左衛門作
『近松全集第七巻』「冥土の飛脚」 3オ 近松門左衛門作
「冥土の飛脚」 1 オ
梅川 冥土能飛脚 近松門左衛門作
身をつくし難波尓さくやこの花能。里ハ
三すぢ尓町の名も佐渡と越後
相の手を。かよう千鳥の淡路町、亀屋
能世つぎ忠兵衛、ことし廾能上はまだ四
年、いぜんに大和より、敷金をもつて養子
ぶん後家妙閑のかいほう処、あきなひ功
者駄荷づもり江戸へも上下三度笠。
「冥土の飛脚」 1 ウ
茶のゆはいかい素双のべに手能かど
とれて。酒も三川四川五川所もん羽二重も
出ずいらず。無地の丸つばぞうがんの國
ざいく尓はまれ男。色能わけ志り里志りて
暮るを待ずとぶ足能。飛脚宿能いそがし
さ。荷をつくるやら不どくやら。手代ハ帳面
そろばんをおゝ口とも尓どや/\と。千万両能
やりくりも、つくしあづま能とりやりもゐながら
「冥土の飛脚」 2オ
かね能自由さハ、一歩小判やしろかね尓つばさ能
有がごとく也、町通り能状取立帰つてそれ/\と。
とめ帳つくり所へたそ頼もふ忠兵宿尓ゐやる
かと。あん内するハ出入能屋やしき能さむらい。手代共ゐん
ぎん尓。ヤア是ハ甚内さま。忠兵衛ハるすなればお下
し物能御用ならば。私尓仰聞られなせ。お茶もて
おじや、と、あいしらう。いや/\下り能用はなし。ゑど
若だんなより御状が来た。是おきゝやれとおしひらき。
「冥土の飛脚」 2ウ
来月二日出の三度尓金子三百両毎さしのばせ
申べく候。九日十日両日能中、その地亀屋忠兵衛方
より。右三百両毎請取内ゝ申置候こと共、埒明申さ
るべく候。則飛脚能請取證文此度登せ候間。金子
請取次第この證文忠兵衛尓渡し申さるべく候。是
此通仰下された。今日迄とゝかぬ処大事能御用の
手はづがちがう。なぜか様にふらちなとはなを。しかめ
言ひければ。ハヽ御尤/\。去りながら此中能雨つゝき。川ゝ
「冥土の飛脚」 3オ
仁 水が出ますれば、道中尓日がこミ。かね能とゝかぬ
のみならず、手前も大分能そん銀。もし盗賊が
切取道からふつと出来心。万ゝ貫目取られても。
十八軒能飛脚宿からわきまへ。けし程も御損
かけませむ、おきづかひあられるな。いはせもはてず
是さ/\。いふまでもない御そんかけてハ忠兵衛がくびが
とぶ。日銀のびてハ御用能間があく仁より、それ処
能せんさく迎ひ飛脚をつかハして早速尓持参