七月大歌舞伎 夜の部 『新古演劇十種の内 身替座禅』『真景累ヶ淵 豊志賀の死』『女伊達』
大阪松竹座
関西・歌舞伎を愛する会 第二十三回
七月大歌舞伎
平成26年7月3日(木)〜27日(日)
『新古演劇十種の内 身替座禅』
待ってましたの仁左衛門さんの身替座禅
かわいらしいわ、かっこいいわ。
楽しいわ、おかしいわ。
もうでれでれで、ごじゃりまする。
酔って帰った時の花道の山蔭右京
詩を詠まれて広げない扇で顔を隠して…
もう愛らしくてにやけるのでごじゃりまする。
そのときの化粧が、左右対称を外してほほを赤くぬられている物ですから、右京の秘め事(接吻)をほのめかすのでございます。
耳上半分は美しい手入れがされた肌色、下半分は白塗り
右京の色気たっぷりなのでございまする。
翫雀さんの奥方玉の井。
突拍子もない醜女風のコミカルなメークではなく、白塗りで美しいのでございます。
翫雀さんの奥方玉の井は女性としての美しさは保ち、女のかわいらしさやあどけなさや嫉妬や恐ろしいまでもの怖さを演じられておりました。
こうする事により、おちゃらけではなく、『身替座禅』本来の男と女の面白みをあらわす事ができます。
今回の『身替座禅』は上のような理由で好きでした。
ところで橋之助さん
七月の初旬に見た『身替座禅』では、舞台の裾に引っ込まれる前、舞台中央前やや左で一旦大きく目を閉じられました。
橋之助さんの見得は大変カッコ良く、自分の年を忘れ毎回心の中で「キャ〜☆」と叫びます。
今回は見得をきる場面ではないのに、大きく目を閉じられたものですから、
『あらら!ナンでしょう…』
と期待してしまう訳です。
ところが大きくゆっくり閉じられた目は、ちょうど良い具合の間を置いて、ゆっくりと品良く開けられました。
これは役者さんのある意味での遊び或は計算でしょうか…。
良い意味での肩すかしです。
そして二度目に見たのは、下旬。
最前列かぶり付きで見ていた私は自ずと期待が膨らみます。
ところが、この場面、すんなりと終わってしまいました。(残念〜^^)
その日によって多少違う芝居
芝居って良いものですね☆
芝居は面白い☆そう感じた『身替座禅』でございました。
その後の仁左衛門さんのおかわいらしい事、色っぽい事
もう私の中では「キャ〜キャ〜☆」「キャ〜キャ〜キャ〜、キャ〜☆」
の『身替座禅』でございましたとさ。
『真景累ヶ淵 豊志賀の死』
時蔵さんの豊志賀 の見事さに怖いやら面白いやら☆
本当の笑いとはこういったものだと思わす舞台の一つでした。
時蔵さんの幽霊そのものの空気のような動きは二度ともに目を見張りました。
ひゅぅ〜
怖い!
うひゃひゃ、ひゃ
これは笑いで逃げずは、精神が保てません。怖すぎました。
怖すぎて、笑いました。
笑う行動によって、平常心を保つ意外に道はありませんでした。
素晴らしい時蔵さん^^
菊之助さんの実力のある流暢な台詞に魅かれました。
もう若手とはいいません。
立派な歌舞伎役者さんです☆
え?竹三郎さんが☆
そんな風に思える程細やかな動きと表情で怖さを出し、笑いを取っておられました。
素晴らしい竹三郎さん
今回の『真景累ヶ淵 豊志賀の死』で竹三郎さんは重厚さを増しておられました。
噺家役の萬太郎産は二度目見た時には自分の笑いが制御できなかったようで、かわいらしい人間味のある役者さんだなと感じました。
観客につられて笑う
これは一見いけないように思われがちですが、演目によってはこういった役柄で一つの芝居にお一人くらいはこういった人間実あふれる役者さんがいらっしゃるのは悪くありません。
芝居とは何かを考えるにあたって、重要な役割を果たされる場合があるからです。
昔の芝居小屋の芝居はこういった事が多くあったのだろうなとほくそ笑んでしまいました。
今から三十年以上前、『日本人の真の笑いとは何か』といった事が盛んに問われる時代がありました。
今回の七月大歌舞伎の『沼津』『新古演劇十種の内 身替座禅』『真景累ヶ淵 豊志賀の死』のはまさにそれでした。
(もちろん、これらの演目は笑いだけではない事は付け加えておきます)
一度目に又と着は大変怖かった。
会場中に霊気が流れ、こわいし面白いし…。
『女伊達』
歌舞伎らしい華やかさの感じられる『女伊達』
拍子木に合わせて自分の心も
カンカン カン カンカンカン カン!
心は高鳴る。
孝太郎さんお早変わり
傘がいっぱい
中からぬっと手を出し傘をよけて
中からぬっと顔を出し、見得よろしく
年甲斐も無く、「きゃぁ〜」「きゃぁ〜」「きゃぁ〜」
いつものニヒルな見得の孝太郎さんの口元は、口元をあげ仁左衛門さんのようにかわいらしくお茶目さを出される。
見得よろしく見得よろしく見得よろしく…
で、
孝太郎さんってなんてカッコいいんだろうと感じましたとさ^^v
二、新古演劇十種の内 身替座禅
山蔭右京 仁左衛門
太郎冠者 橋之助
侍女千枝 梅 枝
同 小枝 児太郎
奥方玉の井 翫 雀
二、新古演劇十種の内 身替座禅
恐妻家の大名・山蔭右京は、恋人に会いに行くため一計を案じ、奥方玉の井に、夢見が悪いので邸内の持仏堂で座禅をしたいと願います。一日ならばと許可をもらった右京は、家来の太郎冠者に座禅衾を被せ身替わりにし、いそいそと出かけるのでした。しかし、玉の井が見舞いに来てしまい…。
狂言の大曲「花子」を素材とした作品らしく、格調とユーモア溢れる内容が楽しい舞踊劇です。
三、真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)
豊志賀の死
豊志賀 時 蔵
お久 梅 枝
噺家さん蝶 萬太郎
伊東春海 橘三郎
勘蔵 竹三郎
新吉 菊之助
三、真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)
豊志賀の死
富本節の師匠の豊志賀は、二十歳近く年下の弟子新吉と深い仲になりますが、顔に腫れ物ができる病になってからは、弟子お久と新吉の仲を疑い、焦りから病は重くなる一方でした。ある日、看病に疲れた新吉は、不仲の継母から逃れたいお久と逃げる決心をしますが、ふと豊志賀の声が聞こえたようで怖くなり、一人で伯父勘蔵の家へ逃げ込みます。すると心配で来ていたという豊志賀が現れて…。
三遊亭円朝の口演をもとにした、近代怪談劇の傑作をお楽しみください。
四、女伊達(おんなだて)
女伊達木崎のお秀 孝太郎
男伊達淀川の千蔵 萬太郎
同 中之島鳴平 国 生
四、女伊達(おんなだて)
新吉原の仲之町。桜が満開の華やいだ街に、美貌の女伊達がやってきます。挑みかかる二人の男伊達を鮮やかに追い払うと、恥じらいながら自身の恋を語り始めるのでした。
五変化舞踊『邯鄲園菊蝶(かんたんそのにきくちょう)』より、夏の景をもとにした華のある一幕をご覧いただきます。
夜の部『沼津』 藤十郎 扇雀 進之介 翫雀 関西・歌舞伎を愛する会 第二十三回 七月大歌舞伎 と同じ内容です ▼
関西・歌舞伎を愛する会 第二十三回 七月大歌舞伎 夜の部を見た。
まずは七月初旬。
七月大歌舞伎 夜の部は役者さんたちの真剣な取り組みが伝わってきて、演目の内容以前の問題として素晴らしい舞台を見る事ができる事自体に感動を覚え、目尻がぬれるのを拭いながら舞台を見つめていた。
藤十郎さんが涙を流されていた。
他の演目で、汗をかいておられる役者さんもいらっしゃった。
だが、演目に会わせての役柄に見えた。皆さん、素晴らしい舞台を展開されていた。
帰宅後に急きょ夜の部を追加予約した。
一度目と二度目では台詞などほぼ一緒だというのに、舞台の雰囲気が違って面白い。
のっておられる役者さんのアップテンポで小気味の良い状態のときの舞台とはどんな物かを目の当たりにした。
多少自由の聴く場面では台詞に色が付けられたり、動作が大きくなる。
ありきたりの仕草の後に、口元がほころぶ。
こうなると、見ているこちらはそれらの役者産たちの虜になって、「きゃぁ〜」「カッコいい〜」と思うのである。
初旬に見た頃は花道は少し後ろの七番目辺りがよく見えるところで演じられる事が多かった。
そして二度目に見たときは、基本のせり上がりのところくらいで立たれ。花道五番目くらいがよく見えるといった立たれ方が多かった。
こういった違いを見て、芝居を支えられ応援されている御贔屓様にありがたいと思うのと同時に、芝居の魅力を目の当たりにする思いである。
今回の夜の部は全体を通しておもしろおかしくわかりやすく演じる事につとめられていたのかも知れない。
おそらく歌舞伎をはじめて見たという方でも言葉が聞き取りやすくされ、それでいて歌舞伎。新しい次世代につなぐ内容のある歌舞伎を志されていたように感じる。
今も心に残る今年の七月大歌舞伎 夜の部
昼と夜の違いも良い意味で感じられ、生きた舞台を楽しむ事ができたと喜んでいる。
夜の部
伊賀越道中双六
一、沼津(ぬまづ)
呉服屋十兵衛 藤十郎
お米 扇 雀
池添孫八 進之介
雲助平作 翫 雀
一、沼津(ぬまづ)
東海道を旅する呉服屋の十兵衛は、年老いた雲助の平作と出会い、気が合うことから荷物を持たせます。途中出会った平作の娘お米に一目ぼれした十兵衛は、平作に勧められるまま一夜の宿を借りますが、お米が十兵衛の印籠を盗もうとしたことから、三人は 思わぬ因縁を知るのでした。
人形浄瑠璃「伊賀越道中双六」を歌舞伎化した作品で、親子の深い縁がたどる悲痛な運命を、細やかに描き出した名作です。
昼の部
一、天保遊侠録(てんぽうゆうきょうろく)
勝小吉 橋之助
坂本屋の八重次 孝太郎
松坂庄之助 国 生
芸者茶良吉 児太郎
唐津藤兵衛 松之助
井上角兵衛 橘三郎
大久保上野介 市 蔵
中臈阿茶の局 秀太郎
吉野山雪の故事
一、天保遊侠録(てんぽうゆうきょうろく)
貧乏旗本の小吉は、若い頃から気ままな暮らしぶりでしたが、秀才の誉れ高い愛息麟太郎の行く末を思い、自らの出世を画策し、組頭たちを招き饗応の宴を催します。しかし、上役の腐敗ぶりを目の当たりにしては元来の性格を抑えきれず、啖呵切って糾弾するのでした。来合わせた伯母阿茶の局がその場を収めますが…。
昔馴染みの芸者八重次との再会や、父親思いの麟太郎の決断など、重なる出来事から自身の無鉄砲な生き方を見つめる小吉の姿を活写した、真山青果の新歌舞伎です。
二、女夫狐(めおとぎつね)
又五郎実は塚本狐 翫 雀
楠帯刀正行 菊之助
弁内侍実は千枝狐 扇 雀
菅原伝授手習鑑
二、女夫狐(めおとぎつね)
雪深い館で一人、楠帯刀正行が亡き恋人の弁内侍を想い形見の鼓を打っていると、又五郎という供を連れた弁内侍が訪ねてきます。不審に思う正行の前に現れたのは、実は狐の夫婦で、鼓の皮にされた親狐を慕いやって来た塚本狐と、妻の千枝狐でした。
『義経千本桜』の「川連法眼館の場」をもとにした作品で、二人を怪しむ正行からの問いかけに、様々な舞いで答える展開がみどころの常磐津舞踊です。
三、寺子屋(てらこや)
舎人松王丸 仁左衛門
松王女房千代 時 蔵
源蔵女房戸浪 菊之助
涎くり与太郎 国 生
百姓吾作 松之助
春藤玄蕃 市 蔵
武部源蔵 橋之助
御台園生の前 秀太郎
三、寺子屋(てらこや)
寺子屋を営む武部源蔵と妻の戸浪は、主君・菅丞相の嫡子、菅秀才を匿う生活をしていましたが、敵方に知られ、菅秀才の首を討つように命じられます。逃れる手立てのない源蔵は、今日寺入りしてきた小太郎の首を替わりに差出すと、首実検役の松王丸が間違いないと断言して立ち去ります。安堵する夫婦でしたが、そこへ小太郎の母千代が迎えにやってきて…。
歌舞伎三大名作の義太夫狂言『菅原伝授手習鑑』。その中でも、忠義を尽くす二組の夫婦の姿を描いた重厚な一幕です。